初代鈴木吟亮「偶成(木戸孝允)」

詩吟動画コレクション

今回ご紹介する詩吟動画は、初代鈴木吟亮先生による詩吟「偶成(木戸孝允)」です。
先生の吟詠から伝わってくる、木戸孝允の憂国の想いと苦悩に、しみじみと聴き入ってしまいました。(↓文章下に続きます)

偶成 木戸孝允  吟詠 吟亮流初代宗家 鈴木吟亮

さて、木戸孝允の「偶成」と言えば「才子は才を恃み愚は愚を守る・・・」で始まる七言絶句もありますが、今回ご紹介した吟は、明治維新後、木戸孝允が療養中に詠んだと言われる、12行の七言古詩(※)です。

詩文(下記参照)を読んでいると、明治政府内の権力闘争に頭を悩まし、国家の行末を憂えていた木戸孝允氏の苦悩が伝わってくるような気がします。

ちなみに、漢詩の作者名を読むときは、伊藤博文→いとうはくぶん、木戸孝允→きどこういん、というように、名前を音読みにすることが多いようです。ご参考まで。

~偶成 木戸孝允(きどこういん)~

一穗の寒燈 眼を照らして明らかなり
いっすいのかんとう まなこをてらしてあきらかなり
沈思默坐 限り無きの情
ちんしもくざ かぎりなきのじょう
頭を囘らせば 知己の人 已に遠し
こうべをめぐらせば ちきのひと すでにとおし
丈夫畢竟 豈名を計らんや
じょうふひっきょう あになをはからんや
世難多年 萬骨枯れ
せなんたねん ばんこつかれ
廟堂の風色 幾變更
びょうどうのふうしょく いくへんこう
年は流水の如く 去って返らず
としはりゅうすいのごとく さってかえらず
人は草木に似て 春榮を争う
ひとはそうもくににて しゅんえいをあらそう
邦家の前路 容易ならず
ほうかのぜんろ よういならず
三千餘萬 蒼生を奈んせん
さんぜんよまん そうせいをいかんせん
山堂夜半 夢結び難く
さんどうやはん ゆめむすびがたく
千岳萬峰 風雨の聲
せんがくばんぽう ふううのこえ

※古詩:唐代(紀元618~907年頃)に絶句・律詩などの近体詩のルールが成立する以前の、比較的自由な形式による漢詩

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